同人王


同人王

同人王  (太田出版) (作品エージェント(株)ホップ・ロウ)

著者 牛帝 先生

 

(内容紹介に ちょとネタバレが含まれています)

 

他の有名 漫画家マンガを差し置いて何故にこれ?という人も居るかと思いますが(コラ
いや それ以前に 漫画家マンガですらないし(汗
同人誌で トップを目指す漫画であっても 他に有名どころがあるだろう!
(すごい極一部でだけど)と思った人は それなりなヲタの人だと思うのですが (^^;

しかし 他の あらゆる漫画家マンガの中で「本気で漫画を描く」という所に たどり着くまで
ここまで苦難の連続が待っている作品は そう無いと思います
(最近だと「アオイホノオ」(島本和彦 先生)とか「描かない漫画家」(えりちん 先生)
俺はまだ本気出してないだけ」(青野春秋 先生)等がありますが)

 

その意味では プロ?の同人作家を目指す! という作品ではあるけれど
漫画家を目指す初心者は まず この作品を読んでみることを オススメします
そして漫画を描くことだけでなく
モノを創ること そのものへの恐怖と業の深さを感じてほしい

・・・いや やっぱ読まないほうが いいかもしんない (マテ
(´w`;)

 

そう この作品 漫画描き始めの 初心者というよりむしろ
漫画家を目指したものの 絵が下手で挫折した人にとって
恐っろしくイタいのだ はっきし言って痛い 痛すぎる  (≧x≦)

もう リアルに  だめぽ状態になるほどに痛い  ◯| ̄|_
人によっては読んで その場で のたうち回るんじゃないかというほどに
それほどに 主人公のダメっぷりは 群を抜いている
(「俺はまだ本気出してないだけ」 よりはマシだが)

でも やっぱり 何かを描き続けている人 描き始めた人は一度手にとって欲しい作品です

(* ̄ω ̄)ノ

 

― で この「同人王」が 一冊の本になるまでの経緯を簡単に説明すると

まず最初に ネット上のWEB漫画サイト 新都社で発表され
ここで かなりの反響があり それに気をよくした作者が(コラ
同人誌(上下巻)を自費出版で販売… と まぁ そこまでなら たまにある話なのですが

その後この作品を サルまん竹熊健太郎氏が ネットで たまたま読んで大絶賛し
電脳マヴォで連載(再掲載)を始めたことによって まるで
この漫画内の主人公のように 牛帝先生の 運命も急転し始めるわけです

そして ついには電脳マヴォ で 初のコミック本化という
なんというか 奇跡のような 展開の結果が この本です ヽ(´∀`)ノ

 

ちなみに 何故か 本の帯には惡の華の作者 押見修造 先生が推薦コメントを寄せています
さらに何故か 太田出版さんYouTubeでプロモーションビデオまで作ってます
(エдエ;)

はっきし言って 本屋で見たこと無いッス    ( ̄  ̄;)  という人が
ほとんどだと思うのですが 大きい本屋さんでないと
なかなか手に入りにくいので ネットで買ったほうが いいかもしんない
(漫画のコーナーではなく 別書籍のコーナーに置いてある場合もあります)

元々 同人誌版が上下巻だったものを 一冊にまとめて
ハードカバーにしてあるので 少々値段が高いと感じるかもしれないですが
竹熊氏によると 実は これでも相当安く 赤字覚悟の値段設定らしいです
(;´△`)

まぁ 電脳マヴォで普通に読めるので まず それを読んでみるのが
一番てっとり早いのですが

 

 

― と これまた かなり長い前置きになってしまいましたが
作品の内容を簡単に説明すると
まんが道」+「サルまん」+「バクマン」のエロ同人版 と
電脳マヴォでは紹介されてますが さすがに ちと分かりづらいと思うので

 

作品の おおまかな あらすじを紹介すると
体力もなく 勉強も 人付き合いも苦手な主人公 根本タケオ
過去に学校で いじめられ 強くなろうとして 道場にまで通った
格闘技すら 全くダメで 起死回生を狙い漫画家を目指すも
持ち込みで 全く才能がないと 遠回しに編集者に言われ絶望する

それならばと プロの同人作家(エロ)の頂点
同人王 を目指すのだが その同人誌すら全く売れず
(というか値段を無料にしてすら さばけないという ありさま)

全てに絶望した タケオは とうとう自殺を決意するのだが・・・

そこで たまたまネットで知り合った もう一人の主人公ともいえる
白子さんに 命を救われる そして その白子さん
実は通称 壁とよばれる 超大手サークル「エチゼン」の同人作家
肉便器先生で (にしても 何度見ても凄すぎるペンネーム (-_-;))
タケオは 白子さんの指導のもと 売れっこ同人作家となるべく修行を始める

そして そこに タケオの妹の ケイコ そしてタケオの唯一の友人にして
実は あらゆる点において天武の才をもつ 真一
さらに 白子さんの親友にして アシスタント も務める ウサミ
(同人版では おもいっきり 某マイメ◯の某キャラ (^^;))
が加わり 何故かタケオを生涯のライバルと定めた
真一との 同人誌対決へと 話は進んでゆく

 

 

なんか あらすじだけを書いてみると 結構少年漫画でも
ありそうな感じの話なのですが

実際は いずれのキャラも 狂気一歩手前というか
特に 白子さんに至っては ほぼ狂気に近いのではないか
というほどに 恐ろしくキャラが立ってます
(余談ですがタケオの お父さんも かなりキャラ立ってます)

過去に 好きだった男の子を救えなかったトラウマから
男性は溜った性エネルギーのために苦しい思いをし 時に犯罪にまで走るのだから
その性欲さえ処理すれば 救われるという 極端な信念にとらわれ
(部分的には間違ってない気も しないでもないですが (;-_-;))
多くの男性を救い 世界に平和をもたらすという 崇高な目的のために
エロ同人作家となった 肉便器先生こと 白子さん

あげく自殺未遂し 病院で意識がない状態の
タケオを救おうと 逆レイプ(と言っても ヌいただけだが)
までしてしまうという すさまじい狂気っぷり  (((;゚д゚)))
(ものすごい献身的では あるのですが (^^;)

だが後半 タケオが成長して 自分の手から離れてゆくのを喜びつつも
自分はタケオにとって もう必要ない存在なのではないか と思い込み
こころを 閉ざしてしまう その乙女心といい かなりの暴走ヒロインです
(とはいえ マヴォ連載時には 肉便器先生  マジ天使という
コメント も数多かったです)

 

 

そして物語の内容だけでなく コミケ会場では何故か全員  だとか
コミケの開場時に雪崩れ込む 狂気の群衆だとか (某作品の方々っぽい)
なんかフツーに 人死にがでるとか (でも後のコマでは普通に蘇ってたりする)
なんで よりによってタケオのエロ同人の題材がペ◯ーヌなのかとか
(さすがに名前は変えてあります)
これまた よりによって必殺技が「ツンくぱ」って・・・(読めば分かります)
もう全編 つっこみどころ満載の作品なのですが  ( ̄◇ ̄;)

注目点はそこではなく これ一冊読めば 同人世界のことが だいたい分かる
同人業界の入門書になってる(微妙に偏ってますが)・・・という 部分でもなく

この物語の中で語られる 絵の上達方法や そのための 心構えなどで
絵を練習してる人にとっては かなり ためになる内容になっていて
― というか 作者の絵 そのものが 話が進むにつれ 上手くなってゆくという
独特の展開になっている点です

 

絵の練習法や 同人業界の裏話など 作者のそれまでの経験が
如実に現れていて これまた かなり荒唐無稽な物語にもかかわらず
なんというか 異様なリアルさを感じてしまう部分が 数多くあり
多分 絵を描き始めて なかなか伸び悩んでいる人が読むと
あーー あるある という共感というか むしろ凹みそうな内容であったりします

なので 下手をすると ダークな救われない オチになりがちな物語なのに
ラストは 一転 一昔前の少年漫画のような 大どんでん返し

主人公タケオは 自分の才能を世に認めさせたい
自分を見下し続けた世界を見返してやりたいという その一念で行動を続けるのだが
それらの苦しみも 全ては 白子さんに出会うためだったのだと気がつくという
大団円な ハッピーエンド

タケオだけでなく 白子さん ライバルの真一 ウサミ メインキャラのほぼ全員が
かなりズレてる信念のもと 勘違いのまま突っ走るのだけれど
それが 最終的には 廻り回って自分たちの夢を叶えるという
奇跡のようなラストのカタルシスには 異様な感動すらおぼえます

 

物語の終盤の
それでも キッカケがあれば世界は変わるんだ・・・
 想像よりもずっと早く・・・
というタケオの台詞が この物語の核心部分を一番
表してるのではないか と自分は思うのですが

 

この「同人王」 なにかを目指す若者が まず最初の根拠の無い自信から
自分の才能の無さという現実に ぶち当たり 挫折し
夢を諦めかけるも そこから友人達の助けの お陰で 立ち直り
また 夢を叶えるべく努力を始めるという

ある意味 お約束 王道パターンの作品ではあるのですが
漫画に限らずあらゆるジャンルで 何かを目指す人達にも
一度は読んで欲しい作品です  ( ≧ω≦)ノシ

 

まぁ かと言って コレを読んで 同人作家って すごい
ボロ儲けな商売なんだ! よっしゃ 俺も同人作家になって
一儲けしてやる! ヽ(・`ω´・)ノ   ・・・と 勘違いしないように

・・・いや 止めはしませんが・・・ (=w=;)

自分が最初の同人誌を 友人と一緒に作った時
いきなり200冊ほどオフセットで刷って(無謀) あげく
二冊しか売れずに その友人と 落ち武者のように家路についた
苦い過去を思い出さずには おれません (マジ)      ◯| ̄|_
(一応その後 某同人ショップに委託して印刷代くらいは回収しましたが)

ただ この本 途中途中で「超初心者向け同人誌講座」というコラムが挟まれているので
本気で同人作家を目指す人は このコラムを読んでからでも
遅くはないと思います  ( ̄∇ ̄;)

 

ちなみに 元々の同人誌版「同人王」(ややこしい)ですが
いろんな漫画の版権キャラが ゴロゴロ出てくる
いわゆる 同人誌らしい同人作品だったのですが
さすがに このコミック版では その辺は修正されています
さらに同人誌版に比べて 加筆されまくっており 完成度自体は かなり
上がってるのですが 以前の同人誌版のカオスっぷりが
個人的には好きだったりします (同人誌版は絶版?です)

同人誌版には 本編の 少し後を描いた おまけ漫画がついてたりして
今や貴重品らしいのですが コミック版(書籍版)には
牛帝 先生自身の自伝的な あとがき漫画が 追加されてます
なんというか・・・この あとがき漫画が リアル話だけに
コレまた 凄まじく 痛いんですが (((;゚Д゚))))

 

あと 以前「サルまん」のレビューでも 少し書いた
竹熊健太郎氏が 運営している ネットマンガ雑誌の「電脳マヴォ」ですが
商業漫画雑誌とは また 違うタイプの漫画が多く掲載されており
(というか一般誌には あまり載らないタイプと言うべきか)

漫画家さんや編集関係者も 結構注目していて
まぁ どちらかと言うと いわゆる漫画マニアな人向けではあるのですが
ネット漫画の 新しい可能性を秘めているサイトだと思います
(かなり好き嫌いが別れる漫画が多い とも言えるのですが(汗))

今後の展開が楽しみなネット漫画雑誌の一つです
同人王」を読んでみた後に 電脳マヴォで 他の漫画を読んでみると
これまでにない 自分にとって新しい漫画を発見できるかもしれないので
一度 覗いてみることをオススメします
ヽ( ̄ヮ ̄)ノ

 

電脳マヴォ  http://mavo.takekuma.jp

 

 

 

著者  牛帝 先生

代表作 「同人王

自サイトにて「激辛のアレ(仮)」 週刊少年ワロスにて「ゼクウ」などを発表

パソコン誌「iP!」にてコラム漫画「ネット超偉人伝」を連載 (完結)

ニコニコ静画(マンガ)にて 「WEB漫画の牛子」を連載 (現在 作者体調不良のため休載中)

 

 

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