アニメーション作画法


アニメーション作画法―デッサン・空間パースの基本と実技

アニメーション作画法 (創芸社)

著者 湖川 友謙

(旧版は 『アニメーション作画法』 『アニメーション作画法・実技編』 の二冊)

(新装改訂版は二冊をまとめた『アニメーション作画法 デッサン・空間パースの基本と実技』)

 

タイトルを見て分かるように アニメーターを目指す人用に書かれた作画技術書なので

一応こちらのカテゴリーに入れたのですが ホントなら
漫画の描き方入門書 のカテゴリーに 入れたほうが いいような気もします

この本 一昔前の まだ この手のキャラクターを描くことをメインとした
デッサンの本や 作画技術書が少なかった頃は アニメーターを目指す人はもちろんのこと
漫画家を目指す人にとっても バイブル的な 作画技術書でした

しばらくの間 手に入りにくい本だったのですが
数年前に 二冊をまとめた 新しい改訂版が出たので 値段が少々高いと思われるでしょうけど
かなりオススメの 作画技術書です

 

まず 湖川 友謙 氏 が 80年代の サンライズをはじめとした ロボットアニメ
どっぷりハマったヲタであれば 知らない人は いないであろう
大御所のアニメ作画監督ですし
つい数年前に 劇場作品『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の作画監督もやってたし
いまさら 説明の必要は ないような 気もするのですが・・・

今のアニヲタは 知らないかもしんない  ◯| ̄|_
どうしても 最近のアニメの作画が 萌え方面に かなり 行っちゃってるので
(と言っても全体の一部なんだけど)
今時の漫画家志望&アニメーター志望の人が見ると 絵が少々古く感じるかもしれません

しかし 湖川 氏 はアニメで キャラクターの「あおり」「俯瞰」(ふかん)の構図を
定着させた まさに80年代以降の アニメ作画の革新を起こした クリエイターの一人で
最近の人でも 一度は名前 もしくは 作画したアニメを見たことがあるはずです

というか自分も かなり影響を受けました  まぁ 活用できてるかどうかは別にして (-_-;)

実際 当時は グリグリ動かすはずの アニメのキャラですら
デッサン的に 作画破綻してることが結構 多かったので   (今もか  (´w`;)
どのような角度から描いても キャラのデッサンが
破綻しないという点だけでも かなり凄いことでした
(ちなみに 意図的に崩してあるものと ただ破綻してるのは別です 一応念のため)

 

無論 自分の描いてる絵と 方向が全然違う という人が 多いとは思いますが
キャラクターの顔のバランスが いまいちとれないとか ハンコ絵の顔しか描けないとか(^^;
体の骨格が分からない デッサンが どうも苦手だ という人は
この本の 作画例のキャラクターを模写するだけでも そうとう勉強になると思います

ただ 湖川  氏 のキャラクターの デザインというか デッサン自体が
わりと リアル目に見えて 実際は それなりの デフォルメがなされているため
あんまし そのまんま 影響を受けると ある程度の年代の人には
誰の影響を受けたか もろバレ ということになりかねないので
ちょと 注意してください まぁ別に それで何か 問題があるわけでもないのですが (;´△`)
(あの スネの部分の 独特な反りの影響を受けた人は 数知れなのではないかと)

 

基本的に デッサンのみならず 画面構成や パース 構図 影の描き方 手の描き方 など
アニメーター向けに 動かすことを前提に 描かれた
キャラクターデッサンの技術書なのですが

いろいろな感情を 表情で表す時の 顔の動き
人体デッサンの 効果的な表現としての動きなど
漫画でも役に立つであろう項目が満載です

さらに 絵コンテ 空間パースの考え方や カメラアングルの考え方など
これも基本 動きのあるアニメでの演出方法なのですが
漫画に十分活用できるというか 活用しない手はないという
技術的な方法論が 数多く説明されてるので
ぜひとも 作画時の 構図等の参考にしてみてください
正直 これもまた中級者向けの本で 漫画を描きはじめたばかりの
初心者には 少し難しい内容かもしれないのですが
描き続けていれば そのうち 理解できると思います (多分

特に リアル路線のストーリー漫画を描きたい! とか
アクションシーン バリバリの漫画を描きたい!という人には
うってつけの作画技術書だと思います

 

そして モノを描く時の 心構えとして
(幾つかの漫画の描き方入門書にも これに近い言葉が書かれているのですが)

◎「追求心は 羞恥心と同居できないものなのです

という言葉が書いてあります
人物だけでなく メカや建物 小物などが なかなか上手く描けないという人は
まず 隅々まで そのモノを観察してみることから はじめてみてください
デッサンが モノを描く能力というよりは モノの形をきちんと見て理解できる
(把握できる) 能力だということが この本を読んでいれば分かると思います

 

で 最後に

エカキにとっての技術とは

 始まりの救いであり

 感性の金棒であり

 自分自身の応用の要であり

 クリエイターの出発点であり

 クリエイターから発展のための 唯一の確信である

という貴重な言葉が載っています

長年 アニメ業界で 本物の プロのクリエイターとして仕事を続けている 湖川  氏の
言葉は 本当に重みが違います

今でも クリエイター志望でありながら 基本的な技術を
感性という 勘違いのもと おろそかにしてしまう人は
この言葉を 胸に刻んでおくべきだと思います    つうか 自分のことだが ◯| ̄|_

 

というか ここに書いちゃっていいのかな? この言葉 (^^;

ちなみに 最初にも書いたように
少々値が張る本なので この値段でも十分 買って損はしないと思うのですが
学生さんで この値段の本を ホイと買うのは さすがにちょっと という人は
大きい図書館だったら わりと置いてあるところがあるので
一度読んでみてから 手に入れるかどうか判断してみるのもいいかもしれません

でも 人体のデッサンの練習のみならず 画面構成やカメラアングルなども
定期的に見なおして 再確認したりすることも 結構あるので
やはり買って ボロボロになるまで 活用することをオススメします

 

著者紹介

湖川 友謙

代表作 (多すぎて全部は無理 (汗))

科学忍者隊ガッチャマン(原画)
破裏拳ポリマー       (原画)
超人戦隊バラタック    (作画監督)
無敵鋼人ダイターン3 (小国一和名義)(キャラクターデザイン・作画監督)
さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち(湖川滋名義)(キャラクターデザイン・総作画監督)
銀河鉄道999(TV版) (湖川滋名義)(キャラクターデザイン・作画監督)
火の鳥2772       (メカデザイン レイアウト)
伝説巨神イデオン    (キャラクターデザイン・作画監督・作画監督チーフ)
戦闘メカ ザブングル   (キャラクターデザイン 作画監督チーフ)
聖戦士ダンバイン    (キャラクターデザイン・作画監督)
重戦機エルガイム    (亥間我子、園田美也名義)(アニメーションディレクター・作画監督)
超時空騎団サザンクロス(キャラクターデザイン)
ゴルゴ13         (コリオグラファー)
GREED          (監督・キャラクターデザイン)
宇宙の騎士テッカマンブレード (キャラクターデザイン 作画)
無責任艦長タイラー
新世紀エヴァンゲリオン (花畑まう名義)(作画監督)
あした元気にな~れ!~半分のさつまいも~(キャラクターデザイン・作画監督)
さよなら絶望先生   俗・さよなら絶望先生  (絵コンテ・作画監督)
劇場作品 宇宙戦艦ヤマト 復活篇      (作画監督)

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